第一話

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「はぁー。面倒なことになったなー」 「なにが面倒なの?」 「なにがって、この係のことだよ」 「困っている人達を助ける大事な係じゃない!」 「確かにそうだけど、僕としては女の子について考えている方が大事なわけで」 「……」 「それに主な活動って雑務でしょ? そんなの僕達がやらなくったって」 「決まったんだから仕方ないでしょ。それに悪いことだけじゃないわ」 「例えば?」 「えっ? えっと、私と思い出が作れる、とか」 「はぁ。早く帰って漫画でも読みたいよ」 「ちょっと! 綺麗にスルーしないでくれるかしら!」 「小豆梓と思い出を作ったって、ねぇ?」 「な、なによ。嫌だっていうの?」 「嫌じゃないけど、僕としてはもっと色っぽい思い出を作りた――」 「変態!」 「痛い! 痛いよ小豆梓! いきなり殴らないでよ!」 「あんたが変態だからでしょ!」 「酷いよ! 僕はただ本音を言っただけなのに」 「建前を使いなさいよ! 一度は手放した建前を!」 「じゃあ、『嫌じゃないよ。僕も小豆梓とたくさん思い出を作りたい』でいい?」 「なんかいやらしいわね」 「いやらしくないよ! 本音はいやらしいけど、建前は純粋な気持ちだよ!」 「純粋な建前ってなによ! 言葉の使い方おかしいでしょ!」 「おかしくないよ! 今日の小豆梓の方がおかしいよ!」 「ど、どういう意味!?」 「興奮気味っていうか、今日はよく食いついてくるよね」 「そ、それは! ……横寺と一緒の係になれたからよ」 「あー。そうなんだ」 「そ、そうよ!」 「……」 「……」 「あのさ小豆梓。何度も言ってるけど、僕は君を恋愛対象としては」 「わかってる! わかってるから言わないで!」 「う、うん」 「あっ、いえ、その、ごめんなさい」 「……」 「……」 「えっと、小豆梓?」 「ごめんなさい。ちょっとお手洗いに行ってくるわ」 「あっ。……建前でも、小豆梓を喜ばせた方がよかったかな?」
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