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では寝ている間になにが起きたのだろうか?
いやそもそも、根本的な問題がおかしいことに今更ながら気がついた。
……ここは、まったくもって知らない場所なのだ。
目が覚めた時点で気がついていたのだが、今いる場所は少し年季の入った感じのアパートの一室だったのだ。
つまり俺は、今知らない場所で、知らない体で起きたわけで……って、なんだよそれ。どういう状況だよ。人体改造的な何かとか? ……いやいや、ないだろ。
――と、そんな風にして頭を抱えながら当惑していた時である。
「ようやく、気がついたようですね。堂上 雲羽 様」
突然、思考を引き裂くように頭の中へ声が響いた!
「のわああああああ! なに? なになに、なんなんだよ!」
あまりに唐突な出来事だったので、俺はへんてこな声を力の限り出した。
その狼狽っぷりは体全体にまで伝染していき、勢いよく飛び出した足はあっという間に絡っていく。一瞬の浮遊感と共に、すぐにやってきたのは、ゴンッ! などという、後頭部への鈍く強い衝撃であった。
「~~!」
しばらくの間痛みに悶絶していると、事務的な、それでいて淡々とした口調で、再び直接脳内に声が響いた。
「大丈夫でしょうか?」
「……いや、全くもって大丈夫じゃない!」
後頭部をさすりながら立ち上がると、俺は力強くそう叫んだ。
もう正直、なにがなにだかさっぱりである。
知らない場所。何故かまったく違う姿の自分。そして極めつけは、脳内に直接聞こえてくる声ときたものだ。
「くそ、なんなんだよ一体……」
「あなたは、――堂上 雲羽様は、無事に泉崎 豹助として転生を果たしたのです」
事務的な声は無感情に告げてきた。
というかこの言葉、一応独り言の答えなのだろうか? もしかすると会話が出来るのかもしれない。
俺は試しに、恐る恐る脳内に響く声に声をかけた。
「……なあ、もしかしてなにがどうなってるのか、あんた知ってるのか? ていうか、転生ってなんだよ。まるで俺が死んだみたいに言いやがって」
「みたいではなく、そうなのです」
意味がわからなかった。俺はここに――いや、まあ今はなんか変な見た目になってるけど、ちゃんとここにいるのだ。
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