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これは、まだ海が今のように荒れたりもせず、穏やかだった頃の話。
その頃の海には、様々な動物達の祖先が生活していた。カバ、象、兎、カエル、人間の祖先だって、全ては豊かな海で生活していた。そんな、生き物の中に『タコイカ』と呼ばれるのがいた。
この生物は、他の生き物とは違い九本足で生活していた。九本の足を器用に使い分け、海を漂う小さな魚や貝を捕まえて食べては何事も無かったように海を遊泳していた。身体の色が変わるのも、特徴的でその姿を見るモノを魅了した。この時、海で姿が変わる生き物はタコイカぐらいだった。
しかし、どんな世界でも争いというのは存在するもので、タコイカも例外ではなかった。些細なことから、タコイカ同士で争いが起きるようになり、西と東、二つの勢力に分かれ、争いが続いた。
争いは何年も続き、お互いに一進一退を繰り返していた。そんな永遠とも思えるような荒い。その均等はある日、突然、崩れた。タコイカの西側が東側のタコイカの足を一本、切り落としたのがキッカケだった。西側のタコイカにしてみれば、相手の足を一本とったという名誉のようなものだ。その成果が周りにも分かるように自分の身体に付けてみたのだ。すると、思わぬ効果が現れた。切り落とした東側のタコイカの足が自分の身体と一つになって、九本だった足が十本になった。元は他のタコイカの足だったというのに、自分の手足であるかのように動く。
思わぬ発見だった。元々、同じタコイカ同士。身体に馴染むのもそうだが、動かせるようになるのは思いもしなかった。足が十本になったタコイカは、すぐにこのことを仲間に伝えた。話を聞いた西側のタコイカ達は、素晴らしい発見だと言い、東側のタコイカと争う中で相手の足を一本切り落としては自分達の足に継ぎ足していった。
西側のタコイカの足は一本増えて十本になり、東側のタコイカの足は一本減って八本となった。こうなってくると均等だった者同士の争いに優越がついてくる。西側のタコイカよりも二本少ない東側のタコイカが勝てるはずもなく、少しずつ負けていき。とうとう、最後は東側のタコイカ達は逃げるようにして海の彼方に消えていった。よっぽど、悔しかったのだろう身体を真っ赤にしてたぐらいだ。
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