第一章 天狗見参

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半月程前に嵐が過ぎてから空が高くなり 日の光も白くかがやいてみえてきた9月初旬のころであった。 もはや、水浴びや泳ぎに適した季節とはいえない時期だった。 まんまんまんと碧にすける水をたたえてなお底をみせてない淵から そそりたつ巨岩の上に今日も下帯ひとつの若侍の姿があった。 花が散ってまもなく頃からだから、もう彼これ半年には成るが 殆ど毎日同じ時刻に岩の上に姿を見せていた。 右手にやすさきがフォークのように枝分かれした 魚をつきさす道具をもっているのも変わらない。
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