第一章 天狗見参

7/19
前へ
/24ページ
次へ
「まてまて 慌てるんじゃねえ  此処をどこだと思ってやがる  上州に源を発して下野を貫き  常陸の大洗で海に入るまで400里中で  魔の淵と恐れられた御前下だ  着物を着たままで泳げるとでも思ってるかえ  見損なっちゃいけねえな  そんなところに舟をとめるもんか  嘘だとおもう奴は飛び込みねえ  手間が省けて助かるというものだ。」 言われて川面を覗いて見ると成る程 禍々しいほど黒々とした水が見えるだけだった。 「なあに裸で泳ぐぶんにゃ どってことねぇさ  さっさと身ぐるみ脱いで飛び込みねえ    おいっ そこの三一〔さんぴん〕テメェから飛び込みな  愚図愚図してると したくはねえが  手荒い真似もしなきゃならなねえ    はやくしろい  そうかいそうかい  どうせ俺達にはできまいとタカを括っているんだな  それではこれで如何だ!」
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加