初恋?

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母の藤子も息子を持て余し、幼稚園というところに放り込んだ。 しかし、小さな子供達の中で俺の素行はますます 増長し、皇帝のように振舞っていた。 ある日、他人の遊び道具を奪い、砂場を独り占めして遊んでいた。 誰も怖がって近寄らない。 独り占めしても最初は得意気だったが、相手がいないのでつまらない事に気がついた。 今日も独りで砂場で遊んでいると後ろに人影を感じた。 振り向くと目の大きなおかっぱの女の子が立っている。 「一緒に遊ぼ」 にこにこして隣に座る。 「おお」 ホントは嬉しかったのに不貞腐れた態度をとってしまう。 「何作る?」 「トンネル」 「おっきいの作ろ!」 みんな遠巻きにして近寄らないでいるのにスゴイ女だ。 まじまじ見ると、色が白くて、ほっぺたがさくらんぼ色…ピンクの唇にくるくるよく動く大きな瞳。 その日の砂遊びは今までの幼稚園生活の中で一番楽しかった。 「ボク、雷文 虎太郎、お前は?」 「稲葉 雪子」 「ゆき・・・かわいい名前だな」 「なんて呼べばいい?」 「こたろうだから・・・」 「こたクンだね」 「ええーーーやだぁ」 「かわいいじゃん」 それからは砂場で毎日ゆきと遊んだ。女の子と遊んだことはない。 『オンナには手を上げるな』と厳しくママに云われていた。 今まではデカい若い衆と遊ぶと思いっきり殴るのが普通。 その力のまま同じ年の男の子を殴ってしまうので男の子の友達は怪我をしてしまう。 力の加減を覚えられたのはゆきがいてくれたからだと思う。 ゆきが痛くないようにといつも柔らかく手を繋いだ。 ゆきが泣かないように優しい言葉をかけた。 ゆきは泣き虫だったけど撫でてあげるとしがみついてきた。 しばらくすると泣き顔なのに笑って「ありがと」っていう。 その顔は本当にかわいくて、いつもドキドキした。
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