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「こたクンって・・・お坊ちゃまなの?」
「そうなのかな?わかんない。ずっとこうやってきたから」
「そうなんだ」
「普通は違うのか?」
「うん、たぶん」
「今度、ゆきの家に遊びに行っていいか?」
「こたクン、今度、お引越しするんだ」
「えっ?ほんと?」
「うん、だから・・・卒園式でさようならなんだ」
「ゆき・・・そんなの・・・やだ」
「ゆきも・・・こたクンとお別れするの淋しい」
何を血迷ったのか、その時咄嗟に口から出た言葉は・・・
「ゆき・・・ボクのお嫁さんになってくれ!」
「えっ?」
「まだ子供だけど・・・大人になるまで待つから・・・だから・・・」
ゆきは喜んでくれると勝手に思っていたのに・・・ゆきは悲しそうな顔をする。
戸惑っている?イヤだったのかな?
・・・下に俯いたゆき。
そして、ポソリと・・・
「こたクン・・・ゆきは・・・男だよ」
「えっ?」
「ほら・・・」
ゆきは恥ずかしそうにスカートを持ち上げてブリーフを下げた・・・。
「あっ・・・」
疑う余地なく・・・ボクと同じものがついている。ゆきはすぐスカートで隠して、下を向きながら言った。
「こんな服とか着てるし・・・間違えるよね」
「うそ・・・」
「ママがね、女の子の服を着ると丈夫になるって信じてて、ゆきは身体が弱いから」
「だって・・・名前・・・雪子だろ?」
「こたクン、名前は稲葉雪兎だよ」
「ゆきと・・・ゆきこに聞こえてた」
なんか全身の力が抜けるような・・・。
でも目が潤んだゆきの顔は、相変わらずカワイイ顔だった。
「男だったら・・・嫌いになったよね」
ゆきが大粒の涙をこぼす。
ゆきを嫌いになるのだろうか?男だから?
しばらくして口を開いた。
「嫌いに・・・ならない。ゆきは?」
「こたクンのこと、大好きだよ」
「引っ越すってどこに?」
「おうちを買ったんだって。そんなには遠くないと思うんだけど」
「近かったら遊びに行ってもいいか?」
「うん、待ってる」
雪兎が、男だったことは衝撃だった。
でも抱き締めた時の柔らかさと、花のような匂いは変わらない。
そしてボク達は卒園式を迎えた。
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