23人が本棚に入れています
本棚に追加
「誰だ! いい加減なことを書いたのは!」
神谷は黒板消しで、あらぬ文字を消し去りに掛かった。
私は立ち止まり、その光景を見ていたが、やはり馬鹿馬鹿しくなり無言で席に着いた。
神谷君が私に上乗りになった記憶も、あの黒板の文字のように消し去って欲しかった。
――ああ、もう嫌! 体が目当て? それとも好きだから? 今まで、そんな気配を感じたことは、なかったけど……。
どっちにしろ、近寄らないに限る。気をつけよう。
神谷は消し終え、怒りの面持ちで振り返った。
「誰だ、書いたのは! 言えよ!」
静かに笑うクラスメイト達。誰も答える者はいなかった。その空気に段々と血の気が引いてくる。
「違うんだよ。るい、保健室意外、彼女とはなにも……」
「なぜ僕に聞く? 意味が分からねぇーし!」
言葉を掻き消すかのように、るいは大きな声を出した。
今まで見たことの無いようなるいに、教室に変な空気が流れた。なかでも女子達は、眼を真ん丸くして驚いている。
「神谷、座ったら? もう授業が始まるよ。馬鹿な悪戯は、ほっとけよ」
るいは天使の様な微笑を作り、神谷を諭した。張り詰めた空気の糸が、それだけで解けた。
最初のコメントを投稿しよう!