第11話

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「誰だ! いい加減なことを書いたのは!」 神谷は黒板消しで、あらぬ文字を消し去りに掛かった。 私は立ち止まり、その光景を見ていたが、やはり馬鹿馬鹿しくなり無言で席に着いた。 神谷君が私に上乗りになった記憶も、あの黒板の文字のように消し去って欲しかった。 ――ああ、もう嫌! 体が目当て? それとも好きだから? 今まで、そんな気配を感じたことは、なかったけど……。 どっちにしろ、近寄らないに限る。気をつけよう。 神谷は消し終え、怒りの面持ちで振り返った。 「誰だ、書いたのは! 言えよ!」 静かに笑うクラスメイト達。誰も答える者はいなかった。その空気に段々と血の気が引いてくる。 「違うんだよ。るい、保健室意外、彼女とはなにも……」 「なぜ僕に聞く? 意味が分からねぇーし!」 言葉を掻き消すかのように、るいは大きな声を出した。 今まで見たことの無いようなるいに、教室に変な空気が流れた。なかでも女子達は、眼を真ん丸くして驚いている。 「神谷、座ったら? もう授業が始まるよ。馬鹿な悪戯は、ほっとけよ」 るいは天使の様な微笑を作り、神谷を諭した。張り詰めた空気の糸が、それだけで解けた。
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