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――まさか、神谷君、ふざけないでよ!
意を決したように、ゆっくりと近づく神谷。とうとう横までやって来た。じっと、氷のような目で顔を見つめる。
「綾、あの時の2人の情事。見せ付けてやろうぜ?」
その表情は、圧力をかけたい人の顔付きではなく、どこか悲しげだった。
神谷君、私に好意を寄せているんではないんだね……じゃあ、なぜこんな事を?
頭の中でいろいろ考えているうちに、それが隙になってしまったようだ。
いつの間にか頬に、神谷君の髪の毛が触れていた。背中には彼の熱い手の平が、圧迫していた。
「は、放してよ! ふざけ過ぎだよ!」
神谷君の唇から、耳に吐息が掛かる。そして2人だけに聞こえるように、ボソッと呟いた。
「2人だけの秘密にして、ゴメン綾……」
――え、一体どういう意味?
「神谷止めろ! 綾に触るな! まさか二人だけで会っているのか!」
るいは神谷の腕を締め上げた。
「いっ痛い、放してるい……」
「絶対に許さない。帰りに詳しく話を聞かせて貰う。いいな?」
じろりと鋭く睨み付け、腕を放した。神谷君はなにか言いたげに、るいに視線を返す。
「今日も君達は、うるさいねぇ! グッッドモーニーングゥ悪ガキども! 早く席に着きたまえ!」
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