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慌てて父を追った。靴べらを使い、革靴を履いている父は、私にやっと笑顔を向けてくれた。2人で一緒に家を出るなんて、何年振りだろう。
「ゲーム、行って来るね!」
「ワンワン!」
りんは私達の後姿をそっと見送り、父にいつものキスはしなかった。
「朝、一緒に歩くなんて久しぶりだね。お父さん、体調悪いの? 青白いよ。昨日喧嘩したの? 夜、うるさかった」
「サラリーマンは、お昼を過ぎたら復活するから大丈夫って、まだ綾には分からないか……。夜の喧嘩が聞こえちゃったのか、ごめんな。飲みすぎちゃって、怒られちゃったんだ。これからは気をつけるよ」
「ふーん。お父さんが外で飲むなんて珍しいね!」
「そうだったか? まだまだ若者には、負けないってことだ」
血が繋がっているから? お父さんと2人だけでいるのが、こんなに落ち着くなんて……今気づいた。
やっぱり2人がいい。
「たまに外で飲むぐらい、毎日じゃないんだし、許してあげれば良いのにね。りんさんって融通が利かないよね」
「父さんが悪いんだよ。遅くなりすぎたんだ、りんは当たり前の事を言ったまでだよ」
「お父さん……なんで結婚したの? 朝だって、お酒臭かったし」
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