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「帰るぞ」
俺はまだ寝ぼけ眼の咲穂に言うと
一気に男から咲穂を引き離しにかかる。
でも男は一向に譲る気はないらしく、
力を緩めようとはしない。
咲穂の会社の同僚みたいだから多少は我慢もしていたのに、
あまりにも挑発的な男の態度にさすがにそれも限界だった。
いくら咲穂がまだ俺とのことを周りの人間に言っていないとしても、
もうすべてをぶちまけて一気に終わらせてやろうと思った瞬間
「ユキ、
帰るの……?」
咲穂が眠そうに目を擦りながら、
ポツリと呟いた。
誰もがその咲穂の言葉に驚き目を見張る中、
俺が手を差し伸べてみると
咲穂はその腕に抱きつくようにしがみついてきた。
「喧嘩したのかと思ってたんですが、
やっぱり咲穂さんって
各務さんのこと好きなんですね」
予想外な咲穂の行動だけでも十分だったが、
凜子の言葉はかなり嬉しいものだった。
例え、
それが事実ではないとしても……。
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