無明の闇

7/29
前へ
/29ページ
次へ
「言え! 言え! 言えよ!」 秋山は力を入れ、上下に体を揺さぶった。その度に腰がぶつかり、痛みが増した。 ――私は酷い事をされてきたかも知れないけど、曜子の死は悲しいよ……。 いつも鼓膜をわざとシャットダウンし、聞こえないようにしていたが、人の死によって冷たく閉ざさしていた心が溶けていた。 今日に限っては、暴言が胸へと突き刺さる。 「曜子を返せ!」 上下に激しく揺さぶられた体は、思いがけないほど力が強く、後頭部を強打した。 景色が、ぶれる。2重にも、3重にも……もう駄目だ。そう思うと自然と涙が止まらなかった。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加