記憶

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カクテルを堪能していた私に 神崎さんがサラリと 耳を疑うような言葉を口にして、 私はその名に手に持っていたグラスを落としそうになってしまった。 でも何とかかろうじてグラスを落とさずテーブルに戻すと、 すぐに神崎さんの顔を見る。 「ユキって……神崎さん、 あの人の事を知ってるの?」 興奮のあまり思わず テーブルに手をつき身を乗り出す。 私の食いつきぶりに 神崎さんは驚き少し逃げ腰になる。 「知ってるも何も、 昨日ここで咲ちゃんと盛り上がっていただろ?  ――覚えてないの?」 おぼえていないの?  とばかりに神崎さんが驚いた様子で訊き返してきた。 ――やっぱりここで会ったんだ!  ずっと見えなかったあの男の影が、 やっと見えだしとりあえずホッとした。
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