記憶

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いくら神崎さんに言われて 男の言葉が事実だったと分かっても、 どうしても思い出すことができない。 頭を抱える私に神崎さんは昨日の事をゆっくりと話し始めてくれた。 神崎さんの話によると私はかなりのペースで飲み続け、 珍しく神崎さんに絡みだしてしまったらしい。 最初は客も少なく大丈夫だったが、 時間が経つにつれ客足も増え、 困っているところにタイミングよくユキが…… あの男が店に一人でやって来て、 どうしようもなく 私の事を託したらしい。 ほんの少しと思っていたが気づくと 私たちは意気投合し、 楽しそうに飲みだしていて次に気づいた時には、 どういう経緯でそうなったかは分からないが 何故かテーブルの上には婚姻届が置かれていて 私があの男にしつこく結婚を迫っていたらしい。 どうやら神崎さん自身もすべてを見ていたわけではなく、 せっかくあの男の嘘を暴けると思ったのに 肝心な部分が抜けていたことに落胆した。
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