記憶

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見た瞬間、 私は心臓が止まるかと思うくらい驚いた。 まさかとは思っていたが、 そのまさかだったとは思ってもいなかった。 だって容子に手渡されたのは 紛れもない婚姻届だったから。 たださっきと少し違うのは 容子たちのとは真逆でほぼ空欄で、 代わりに証人欄にはしっかりと 容子のサインと印鑑が捺されていたこと。 「これって……」 何故こんなものがココにもう一通あるのか、 そして何故それを 私に手渡してきたのか。 私には容子が何を考えているのか全く分からなかった。 「こんなもの今貰って迷惑なのは 分かってるけど、 咲穂が結婚するときには 私が証人になりたいから 咲穂の分も貰ってきちゃった」 悪戯っぽく笑う容子に返す言葉が 見つからない。
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