記憶

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貰ってきた、 と言われても私には結婚する相手もいなければ 予定もないということを 容子が一番知っているはず。 結婚する予定がある人には 喜ばしいものかもしれないが、 今の私にとっては重荷というか 迷惑でしかない代物だった。 でも容子に悪意がないのは分かってるし、 何より幸せな二人を目の前にそんなことは言えず私は 「ありがとう」 と言うしかなかった。 そしてアルコールが入っていたせいもあったのかもしれないが。 私は容子達に言われるままに 自分の欄を埋めてしまった。 そう!  あの時の婚姻届が 今朝あの男に見せられたものだったのだ。 靄(もや)のかかっていた記憶が 段々と蘇ってゆく。
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