蜜月

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「ありがとう……」 嬉しさとくすぐったさに顔がにやけそうになるのを必死に堪え、 お礼の言葉を言うとユキは少し満足そうに、 そして照れくさそうに微かに笑い風呂場の方に行ってしまった。 やっぱり可愛いかも……。 ユキが部屋を出ていく姿を見て、 またそう思ってしまった。 私はユキが居なくなったのを確認すると椅子に座り食べだした。 少し焼きすぎな目玉焼きは固めで苦味を感じたが、 それでも私にはすごく美味しく感じた。 ――幸せだな、 って思ってしまった。 でも、 その後がまた大変だった。 私がいくら断っても今日に限って会社まで送ると譲らないユキ。 確かに少し時間的にもヤバいが躊躇(とまど)ってしまう。 今まで友人から恋人へ、 ということはあったが身体から、 ということは初めてで私の中でかなり特殊な事だった。 はっきりした記憶のまま抱かれ薄れていた記憶が…… 夢だと思っていた記憶が…… すべて現実で後からじわりじわりと蘇り、 あんなに嫌いだった相手に今は好意を持ってしまっている。
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