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どうしよう
――途方に暮れ、
台所に立ち尽くしていると玄関の方から物音がした。
一瞬、
反射的に隠れる場所を探してしまったが、
でもそんな場所は勿論ないし、
そんなことをして見つかろうものなら余計に怪しまれる。
近づく足音に鼓動を高鳴らせながら、
私はドアに背を向ける。
ただ意識はしっかりとドアのほうに向けられていた。
ガチャッ、
とドアが開く音に私の緊張は一気に高まり、
思わず背筋をピンと伸ばしてしまった。
「ただいま……」
少し探り探り、
名雪の声が耳へと届く。
「おかえり」
私はさも今、
気づいたように取り繕いながら振り向くがユキの顔を見た瞬間、
自然と顔が熱くなり、
そして気恥ずかしさから思わず目を伏せてしまう。
でもユキはそんな私を気にする様子もなく
ネクタイを緩め私の方に近づいてくる。
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