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それを拾いソファーの背に掛けるとキッチンの方へ足を向ける。
そして手慣れた手つきでコーヒーをセットすると棚からカップを2つ出す
―――必ず彼女が出てくると踏んで。
*
部屋に取り残された私は一人ベッドに座り、
暫く呆然と男が出ていったドアを見つめていた。
二日連続で同じ男と朝を迎えてしまったことのショックと、
自分の学習能力のなさには程々、
呆れてしまう。
ただ驚いたことに男は当たり前のように私のことを「咲穂」と呼び、
それに抵抗を覚えるが、
何故か妙な心地よさも感じてしまう。
その違和感に私はただ戸惑うしかなかった。
「どうしたらいいのよ……」
他人の寝室に、
しかもベッドにずっと居るのは落ち着かないが、
部屋を出てあの男に自ら近づくようなマネもしたくはない。
でもキチンと閉められたドアからは物音はひとつも漏れてこなくて、
ドアひとつ隔てて居るはずの男の様子を全く伺うこともできなかった。
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