タイミング

12/39
前へ
/39ページ
次へ
俺は素直に足を止め振り返ると、 どうやら咲穂の事を思い出したようだった。 「この間、 神崎のとこで会ったあの子か?」 勘のいい佐藤のことだから、 もっと早く気づくと思っていただけに意外で、 その驚きように思わず笑ってしまった。        * ヤバい―……、 まったく仕事に身が入らない。 何度も気を引きしめて仕事をしようと思うが、 すぐに昨日のことを思い出して顔がにやけてしまう。 気づくとユキのことばかりを考えている私。 さっき別れたばかりなのにもう“会いたい”って、 “抱きしめてほしい”って思ってしまう。 ヤバいな、 かなり重症だ。 ――自分自身に呆れ、 頭を抱えそうになる。 まさかこの歳でこんなにも男にのめり込むなんて思ってなかった。 まだこんなにも誰かを愛せる自分がいるなんて……、 そして何より良平以上に誰かを好きになるなんて、 もうないと思っていた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1582人が本棚に入れています
本棚に追加