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俺は素直に足を止め振り返ると、
どうやら咲穂の事を思い出したようだった。
「この間、
神崎のとこで会ったあの子か?」
勘のいい佐藤のことだから、
もっと早く気づくと思っていただけに意外で、
その驚きように思わず笑ってしまった。
*
ヤバい―……、
まったく仕事に身が入らない。
何度も気を引きしめて仕事をしようと思うが、
すぐに昨日のことを思い出して顔がにやけてしまう。
気づくとユキのことばかりを考えている私。
さっき別れたばかりなのにもう“会いたい”って、
“抱きしめてほしい”って思ってしまう。
ヤバいな、
かなり重症だ。
――自分自身に呆れ、
頭を抱えそうになる。
まさかこの歳でこんなにも男にのめり込むなんて思ってなかった。
まだこんなにも誰かを愛せる自分がいるなんて……、
そして何より良平以上に誰かを好きになるなんて、
もうないと思っていた。
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