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「待って、
送るから」
咄嗟に咲穂の腕を掴み言葉をかけると、
分かりやすいくらいピタリと動きを止め、
「大丈夫だから」
と渋るように断ってきた。
でも時計を見ると電車通勤の咲穂には決して大丈夫な時間帯ではなく、
それになにより俺がもう少し咲穂と一緒に居たいって思った。
俺は渋る咲穂の腕を掴み半ば強引に車に乗せると車を走らせた。
咲穂の会社は逆方向ではないがやはり朝は車が多い。
前とは違い、
いつもより遅れてマンションを出たせいで
また会社に遅刻しそうになってしまった。
そうなると決まって近寄ってくる一つの影。
振り向かなくてもあいつが何を考え、
どんな顔をしているのかよく分かる。
俺の背後に足を忍ばせやって来るあいつに
気づかないフリをして俺は仕事を続けた。
「各務!」
嬉しそうに俺の名を呼ぶあいつ、
佐藤を無視し続けた。
そんなことで諦める奴だとは思っていないが、
絡むのも面倒くさいのが本音。
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