タイミング

6/39
前へ
/39ページ
次へ
「この間、 ご飯に連れて行ってくれるって言ったじゃないですか」 なかなか“うん”と言わない俺に痺れを切らし、 更に言葉を付け足す。 一瞬、 覚えがないと言おうと思ったが確かにコピーを頼んだ時に流し程度に そう言ったことを思い出してしまった。 本当に厄介なことになってしまったな、 と思わず本人を目の前に溜め息をつきそうになる。 「連れて行ってやりたいのは山々なんだけど、 ほら、 最近ずっと残業続きだろ?」 でもそれを必死に堪え、 なんとか仕事を理由に断ってやろうと一芝居うつ。 「別に仕事の後じゃなくてもいいですよ? 各務さんのためなら私は休みの日だって全然オッケーです」 どうやら相原の方が俺よりも一枚も二枚も上手で、 まったく諦める様子もなく余裕の笑顔で答えてきた。 まるで佐藤の女版といった感じだ。 でも、 仕方がない ――。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1582人が本棚に入れています
本棚に追加