契約

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目の前には“契約書”を手に、 魂が抜けたみたいに呆然と座り込む彼女がいる。 そんな彼女の横顔を眺めながら 気分よくニコチンを肺に目一杯、 送り込む。 落ちた―― 俺は確信を覚えていた。 「……で、 どうする?  契約書も交わしたのに、 それを破るのか?」 追い討ちをかけるように放った俺の言葉に 彼女は分かりやすいくらいの反応を見せる。 「本当に私たち結婚しちゃってるの?」 ゆっくりとこちらを向き、 そしてまだ信じられない様子で俺に訊ねる。 俺は頷きながら思わず笑みを漏らす。 「指輪がなきゃ実感が沸かないか?」 俺がからかい半分で彼女の左手の薬指を指差すと、 彼女は顔を真っ赤にして左手をグーにして隠す。

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