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さっき車のドアを閉め、
エレベーターのボタンを自ら押していた男が
今さら手が塞がっているなんてフザけたことを言いだした。
単に私が嫌がるから面白がってドアを開けさせようとしているだけとわかっていたが、
いちいち言い返すのも面倒になり諦めてドアを開ける。
微かに笑いながら先に中に入って行く男の後を追うように
私も続くように入ると
「お邪魔し……」
思わず言いにかかるが、
私は言い終わる前に慌てて言葉をのみ込んだ。
だって気づくと男が振り返り冷ややかな目で私を見ていたから……。
男の目が何を訴えているのか分かった私は仕方なく「ただいま」と言い換える。
すると男は満足気に頷いて見せ、
そして私に「おかえり」と言い、
リビングに消えていった。
――私は不覚にも男のセリフにドキドキしてしまった。
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