存在

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咲穂に後ろ髪を引かれつつも、 後ろの車にクラクションを鳴らされ仕方なく車を走らせる。 ルームミラー越しに咲穂の姿を見ると、 咲穂は何故か俺の車をいつまでも見送るように立っていて、 遠退き小さくなってゆく咲穂の姿に俺の鼓動は高鳴ってしまった。 「そんな風に見てんなよ……」 只でさえ咲穂を抱き上げ、 久しぶりにあんなに近くに咲穂を感じてしまったばかりで、 染みつくように彼女の感覚が残り続けているのに……。 ルームミラーに映った咲穂の姿がいつまでも目に焼き付き忘れることができず、 思わず漏らしてしまった。 昨日、 俺が飲み残してしまったがために 咲穂が怪我をしてしまった申し訳なさよりも募る邪まな感情。 あのまま強く抱き締め、 咲穂の白い首筋に顔を埋めたい衝動がまだ治まらない。 これは男特有の誰にでも感じる欲情なのか、 それとも咲穂だからなのか。 どちらかは分からないが、 そろそろ我慢の限界かもしれない……
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