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「や、
別に用って訳じゃないよ。
聞いてみただけ……、
何にする?」
やっぱりどこか落ち着かない様子の神崎さんは
何故かチラチラとトイレの方向を気にしているような気がした。
「えっと……」
神崎さんの目線は気になったが、
さすがにお店に来たくせに
何も飲まずに帰るわけには行かず
棚に並ぶお酒に目を移す。
とはいえ、
ユキとの約束を破るわけにもいかず、
私は迷うフリをしながら悩み、
迷っていると
「神崎くん、
同じのもう一杯作って」
不意に女の人の声がして私は自然と目で追うと、
そこには細身のスラッと背の高い女の人。
女の私でも一瞬、
目を奪われそうになるくらいの美人顔。
どうやら彼女が先客で、
顔を見たことはないが常連のようだった。
彼女は私の視線も気づかず元の席に座ると、
楽しそうに飲みかけのお酒に手を伸ばす。
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