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渋々解放すると俺はふと感じた疑問を彼女に投げかけてみた。
「遅れる……ってどこに?」
少しできた距離に目と目が合う。
俺の言葉に咲穂が明らかにバツ悪そうな顔をして、
何か言いたそうに口をもごもごさせると、
少し俺から目を反らしポツリと言った。
「会社の子の結婚式……」
すごく小さな声だったけど確かに聞こえた咲穂の言葉に俺は目を見開き、
そして飛び起きる。
「キャ……」
その拍子に後ろに転びそうになった咲穂を慌てて支えると俺は確認するように、
もう一度訊き返した。
「――今、
なんて言った?」
咲穂のことよりも、
咲穂の言葉の方が今の俺にとってかなり重要で、
まっすぐ咲穂を見つめ、
その距離を詰める。
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