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愛子が今、
目の前に居る。
一瞬、
夢か幻じゃないかと思ってしまった。
俺は仕切りにキョロキョロと辺りを見渡し続けている愛子の姿から目が離せない。
不意に目が合う。
愛子は一瞬驚いた顔を見せたが、
すぐに嬉しそうに微笑む。
「ユキ!」
懐かしいあの声が俺の名前を呼び笑顔で駆け寄ってくる。
でも俺にとって
愛子という存在は気持ちを不愉快にさせるもの以外の何者でもなかった。
自分でも分かる
――次第に眉間にシワが寄っていくのを。
沸々と湧き上がってくる苛立ちと不快感、
そして吐き気を催しそうだった。
「ユキ、
久しぶり。
元気だった?」
俺は無邪気に笑いながら話しかけてくる愛子を無視して、
その脇をすり抜ける。
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