トラウマ

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「え!? ちょっと、 待ってよ!」 まさか俺が通り過ぎてゆくなんて思っていなかったのか、 驚いた様子で愛子は振り返り咄嗟に俺の腕を掴む。 「触るな!」 瞬間、 俺は声を荒立て迷うことなく愛子の手を雑に振り払い、 睨みつける。 俺の声が周囲の視線を集め辺りはざわつきだす。 運の悪いことにちょうど昼時で人通りが激しく、 注目を集めてしまった。 「おい、 ユキ落ち着けよ」 今にも殴りかかりそうな勢いの俺を佐藤が止めにかかる。 俺が女に対してここまで怒りを露わにしたことはなく、 普通の女なら驚いて泣き出しそうなものを愛子ときたら 「ひどいなー、 久しぶりなのに……」 呑気に笑みを浮かべながら普通に話しかけ俺に歩み寄ってくる。 相変わらずの愛子の様子に背中に虫唾が走り、 更に俺を苛々させた。
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