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なかなか掛ける言葉が見つからず、
しばらく咲穂を見つめていると
ガラスに映る俺に気づいたのか
ビクッと身体を跳ねさせ、
そして勢いよく振り返り俺を見た。
「あ……」
俺を見た彼女は、
眉間にシワを寄せている俺を見て、
まだ怒っているんだと誤解してしまったらしく顔を強張らせ、
そして少し怯えたあの顔をする。
胸が痛んだ――
すべて自分が悪いと知りながらも
咲穂のこの表情はすごく俺を罪悪感でいっぱいにさせた。
「ほら……、
部屋に入るぞ」
気の利いた台詞も優しい口調も何一つ用意できず、
俺はいつも通り淡々とした口調で言いながら咲穂の腕を掴んだ。
「やっ」
咲穂が俺の手を思いっきり振り払い、
怯えた顔で見てくる。
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