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俺は振り払われた手よりも胸がズキズキと痛むのを感じながら
「嫌じゃないだろう。
そんなずぶ濡れ格好で、
風邪でも引くつもりか」
「クシュン」
言ったそばから咲穂が小さなクシャミをすると身体を震わせる。
「ほら、
言った傍から……」
俺は震える咲穂の腕をもう一度、
掴み力任せに引き上げ立たせる。
でも咲穂は立つのを拒んでいるのか自らの足で立とうとはせず、
その反動で俺の胸に倒れ込んできた。
一瞬フラついたのかとも思ったが、
咲穂は俺の胸に倒れかかったまま、
くだけるようにしゃがみこみそうになる。
俺が慌てて支えるために身体に腕をまわすと、
咲穂の身体は想像以上に冷えていて顔を見ると辛そうに顔を顰(しか)め、
しかも吐く息が荒いような気がした。
反射的に咲穂の額に手を当ててみると身体とは正反対に異常なくらい熱い。
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