戸惑い

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俺には咲穂が何を考えているのか分からなかった。 確かにキスを促したのは俺で 咲穂の唇を堪能しているが、 まさか咲穂がキスに答えてくれなんて思ってもみなかった。 しかもこんなに深く、 そして長く……。 どちらかというと、 かなり積極的な咲穂。 思わず俺のことを好きなのかもと 錯覚してしまうくらいだった。 ――そんなわけないのに。 確かに多少は心を許してくれ、 出会った頃よりは距離が縮まったのは確かだが、 それは『好意』とは違うものだとわからないほど俺はバカじゃない。 じゃあ、 これはなんなんだろう―― 俺の首に腕を絡め、 やめる気配すらみせない咲穂に疑問ばかりが膨らんでゆく。 「ちょっ、 あれ……」 不意に女の声が聞こえたかと思うと黄色い悲鳴へと変わる。
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