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身体を揺さぶり起こそうとも思ったが、
聞こえてくる咲穂の規則正しい寝息に起こすのも気が引け、
俺は咲穂を抱き上げた。
軽い……、
とは言わないが重たい訳でもなく程よい重さ。
前に一度、
抱き上げたときは気が動転し、
そんなことを考える余裕なんてなかった。
咲穂を抱き上げたまま、
なんとか寝室のドアを開けベッドまで運び寝かせるが、
咲穂の下から腕を抜くのを躊躇ってしまう。
久しぶりに感じた咲穂の温もりをもう少し感じていたい――
このまま抱き締めていたいって思ってしまった。
でも、
さすがにそういうわけもいかず仕方なく咲穂から離れようとした瞬間、
服が引っ張られ首元が軽く絞められる。
その反動でベッドの方へ引き戻され、
咄嗟にベッドに手をつき咲穂を潰さずにすんだ。
ホッとしながら見ると咲穂がしっかりと俺の服を掴んでいて、
無意識だとは思うが、
そんな些細なことにまた愛しさを感じ、
思わず笑みが漏れてしまう。
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