信じる気持ち

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『何って、 随分冷たいのね』 俺の声に愛子は不服そうに返してくる。 でも俺の反応は普通に考えて当たり前だと思う。 昨日咲穂は気づかなかったかもしれないが、 帰り際わざと俺に腕を絡めてきた。 あれは昔から愛子が俺を誘う時の合図。 あの状況であんなことをしてくる愛子の心理が俺には理解できなかった。 咲穂にはもう愛子との事を話したから、 あとは愛子がどういうつもりで俺に近づいてきているのかを 聞かなくてはいけない。 そして事によっては ハッキリとした態度で返さなければいけないと思っていた。 「当たり前だろ。 咲穂と結婚したって言ってるのに、 本人を目の前にして何を考えているんだ」 冷静に話すつもりが昨日の事を思い出し、 つい声を荒立ててしまう。 でもそんな俺の怒りも愛子には伝わっていないらしく 『何を真剣に怒ってるのよ、 冗談じゃない。 それに咲ちゃんって そういうのは鈍そうだから 気づいてないと思うよ』
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