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「ユキ、
どうしたの?
何をそんなにピリピリしてるのよ。
たかが結婚しただけで……」
でも少しの間を空けて返ってきた愛子の言葉は
あんなにハッキリと言ったにも関わらず
俺の耳を疑わせるものでしかなかった。
どうやら愛子には全く効いていなかったようで、
本気で頭でもおかしくなってしまったんじゃないかと思ってしまった。
「たかがって……」
驚き復唱する俺に電話の向こうの愛子は妖しく笑う。
「だってそうでしょ?
みんな結婚が凄いことだと勘違いしてるけど、
たいしたことないのよ?
そのうちユキも分かるとは思うけど、
単に紙切れ一枚増えただけ」
愛子に何があったのかは解らないが、
俺の知っていた愛子は間違ってもそういうことを言う奴ではなかった。
少なくともあの頃の愛子は
俺の知る誰よりも“結婚”に憧れていたのを知っていたから。
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