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その佐藤も帰り、
気づけばオフィスには俺一人になっていた。
時計を見ると二十時を少し回っている。
「帰るか……」
残業しても一向に進まない仕事に
俺はキリをつけて帰ることにした。
机に広げた書類を片付け、
帰り支度をしていると、
不意に携帯が震えだした。
咲穂か?
それにしては少し早すぎるな、
と思いながら俺は携帯を手にした。
でも俺の予想とは反し、
その画面に映し出されている名前は愛子のものだった。
いっそ無視してやろうとも思ったが咲穂のためにも逃げたくない。
「はい……」
俺は気を引き締め重い口調で電話に出た。
『ユキ、
今日ヒマでしょ? ご飯でも食べに行かない?』
この間の電話のことなんてひとつも気にせず、
いつもの調子で話してくる愛子。
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