接触

3/28
1097人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
でも私の考えが甘かったのかもしれない。 私なんかより愛子さんのことをよく知っている ユキの言葉をもっと信じればよかった。 その日は珍しく残業で、 しかも容子との約束に少し遅れ気味で 約束のお店に急いでいた。 この間、 迷惑かけたお詫びに今日は容子が奢ってくれるとか。 あの日以来、 妙に過保護なユキはまた帰りに迎えに行くと言い出す始末。 うっかりその事を容子に言ってしまい惚気られたと、 からかわれてしまった。 「咲ちゃん?」 走る私の耳に雑踏に紛れ一瞬、 気のせいかな?  と思うくらい小さな声が届く。 反射的に足を止め、 その声の主を探す私の目に愛子さんの姿が飛び込んできた。 偶然?  それとも……。 一瞬、 疑いたくなるくらいの偶然の出会い。 よく急ぎ走る私に気づけた愛子さんに戸惑ってしまった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!