挨拶

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その前に以前から話していた咲穂の家に挨拶に行くことになった。 運よく咲穂のお父さんの休みがあったからだ。 俺としたら余裕を持って行きたいから、 できればもう出たいのに咲穂ときたら寝室に籠ったまま、 なかなか出てこない。 女の準備は何でこう時間がかかるんだろうと 疑問を持たずにはいられない。 別に咲穂が時間にルーズというわけではない。 大切な日だけに俺が一人で心配になって焦っているだけ。 現に予定通りの時間にはマンションを出れたし、 咲穂の家には時間より少し前に着くことができた。 でもどんなに時間通りでも俺の緊張が和らぐことはなかった。 数か月前、 咲穂の家に挨拶に行った時は全然平気だったのに、 やっぱり気持ちの問題なのかもしれない。 確かに咲穂を手に入れたいと思い多少緊張はしたが、 あの時は俺にとって仕事の“契約”似た感じだった。 でも今はそうじゃない。 咲穂を…… 大切な人を貰うための大切なもので、 こんなに緊張したのは何時ぶりかというくらい 緊張してしまった。
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