対面

13/40
前へ
/40ページ
次へ
格好悪いな、 と思いながら咲穂の存在に救われていた。 「大丈夫だから……。 もう着くぞ」 言いながらハンドルを離し、 咲穂の手を握り返した。 懐かしいは言いすぎかもしれないが久しぶりの家。 何というか家の前に立つだけで威圧感を覚えてしまう。 咲穂のように「ただいま」って 普通に入っていければいいのかもしれないが、 咲穂の家とは違い、 そういう習慣はない。 だからと言って、 さすがに自分の家に入るのにインターフォンを押すのも可笑しい。 俺は何も言わず普通に咲穂を連れ中に入って行く。 「ちょっと、 ユキ」 自分の時とは明らかに違う俺の様子に 動揺を隠せないようだった。 「大丈夫。 俺の家は、 いつもこんな感じだから」 心配かけまいとかけた言葉も、 余計に咲穂の表情を曇らせてしまうものだった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1046人が本棚に入れています
本棚に追加