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――居たんだ……。
部屋を見渡し確認すると、
リビングには母親の他に兄貴もいた。
部屋の中に二人も居るのに
気配すら感じ取れないってどういうこと?
……
呆れてしまった。
「何か言ってから入って来いよ。
泥棒じゃあるまいし……」
兄貴が呆れながら俺に言うと
ドカッとソファーに深々と座りタバコに火を点ける。
相変わらずの兄貴の皮肉に苦笑いが出る。
親父が居ないというのに、
すでにピリピリとした空気が辺りに漂い始める。
「史貴、
止めなさい」
珍しく母さんが兄貴をたしなめたのには驚いた。
「親父を呼んでくる」
兄貴も少し驚いたらしく、
吸い始めたばかりのタバコを消すと
顔を歪ませながら足早に部屋を出ていってしまった。
兄貴が部屋から出て行ったことで
ほんの少しだけ部屋の空気が軽くなると、
俺の後ろで咲穂が小さく安堵のため息をつくのが聞こえた。
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