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相手の家に挨拶に行くのなら、
とお店の人に勧められるままに買ってしまったのだ。
普段の私なら絶対に買うことも着ることもないようなタイプだけに
多少の着心地の悪さを感じてしまう。
でも少しでも印象を良くしたくて
私は我慢してユキの待つリビングへと行った。
「あ、
準備できたか?」
私に気付いたユキが吸っていた煙草を灰皿に押しつけるように消す。
そして緩めていたネクタイをキチンと締め直しながら
立ち上がり私の方に歩み寄ってきた。
「うん、
お待たせ……」
答えながらユキの視線がやけに気になって落ち着かない。
やっぱり変?
――似合わない?
いくら淡いとはいえ三十近いのに挨拶にピンク系のチョイス。
着ている自分でさえ違和感を覚えるのだから仕方ないと思いながらも、
やっぱりショックだった。
「変?
やっぱり、
もう一つの黒のスーツに着替えてくるね」
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