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手紙を読み終えた咲穂は
どこか安心したような嬉しそうな笑みを漏らし俺を見てきた。
俺も愛子が佐田さんと向き合おうとしていることが嬉しく思えた。
「いつか愛子さんと旦那さんと四人でご飯食べれたらいいね」
まるで俺の心を読み取ったかのような咲穂の言葉に
驚きながら俺は頷いて見せる。
結局、
俺も愛子も臆病で、
ちょっとした一歩が踏み出せずに遠回りしていただけ。
可笑しなことにお互い踏みだす勇気を持つことが出来たのは
自分を心から想ってくれる相手ができたからだった。
やっぱり俺たちは似た者同士だったのかと今となっては笑い話。
「良かったね、
愛子さん。
私たちも後は式を迎えれば
他と同じ夫婦よね」
自分たちの置かれている状態を可笑しそうに笑う咲穂を見て、
聞くタイミングを逃し一瞬忘れかけていた婚姻届の事を思い出す。
咲穂に婚姻届の事を言わなければ……
手紙を嬉しそうに読み返す咲穂を横目に俺は引き出しの方を盗み見る。
咲穂は判子を探していてアレを見つけたのだろうか。
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