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あの日……、
婚姻届を出しに行こうとしていたあの日、
俺は確かに区役所まで確かに行った。
でも担当の人を目の前にして、
どうしても出すことができなかったのだ。
それにあの時は、
まさかこんな風になるなんて思ってもみなかった。
只、
一人の人間を自分の勝手で縛りつけ逃げられないようにするということに後ろめたさを感じた。
確かに前から気にはなっていたし、
身体の相性も良い。
親の見合い相手と結婚を強要させられるよりは咲穂の方が良いって思ったのも事実。
でも結局はそれも俺の都合で、
酔っていた時は咲穂の方が乗り気だったが朝になったらあの調子。
少しも合意の上ではなくなっていて、
これでは犯罪のような気がした。
でも今思えば、
もしかしたらあの時から俺は咲穂が……、
咲穂の心が欲しかったのかもしれない。
身体だけの関係……
傷の舐めあい……
癒えるどころか虚しさだけが募っていった愛子との時間。
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