小さな落とし穴

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もし咲穂が変に誤解しているのなら、 それはかなりの問題なのだから。 すべては咲穂から突きつけられた婚姻届から始まり、 俺はこの『契約書』で咲穂が言い逃れできないように縛り付けた。 でも今度はそれが自分の首を絞めるようなことになるとは思ってもみなかった。 「何て話を切り出せばいいんだ……?」 後ろめたいことなんてないから 本当は難しく考えなくていいって分かっている。 それでもデリケートな問題だけに軽々しく口にできない。 もし婚姻届に気づいているにも関わらず、 それには触れてこない咲穂の意図は?  咲穂もサラリと聞いてくれればいいのに、 と人のせいにしてしまいそうになる。 この件に関しては完全に俺に非があるんだから 俺から話すべきことだ。 「あー、 サッパリした」 一人葛藤している俺とは裏腹に 咲穂が気持ちよさげに溢しながら部屋に入ってきた。 本当はそのまま咲穂に話を切り出せばいいのに、 人間の反射神経とは怖いものだ。 俺は反射的に封筒を隠してしまった。
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