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なるべく自然体でいようと思っていたが、
婚姻届を目の当たりにすると気持ちが先走りしてしまう。
俯く私にカラ笑いに近いユキの声がしたと思うと、
それがピタリと止まり
「ごめん!」
急にユキがハッキリとした大きめの声で私に謝ってきた。
ごめん
――ってどういう意味?
その声の大きさと言葉の意味を読み取ることができず
私は身体を強張らせてしまう。
そんな私の手をユキが包み込むように優しく握ってきた。
手の甲から伝わるユキの温度と優しさに
私は大丈夫だと自分に言い聞かせ、
顔を上げユキを見る。
ユキはホッとしたような嬉しそうな顔を見せたが、
すぐにその顔から笑みは消し
「ごめん、
ずっと咲穂に婚姻届を出したって
嘘をついていた」
ゆっくりとした少し重い口調で語りだすユキに
私の顔は自然と俯きだす。
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