547人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも誤解しないでほしい。
出さなかったのは
咲穂を騙すためじゃなくて、
手放したくなかったから」
急に手を握るユキの手に力がこもり、
同時に言葉も訴えるように強いものと変わっていった。
ユキの言葉が……
ユキの握る手の力強さが
私の中に生まれた微かな不安を一気に消し去ってくれた。
代わりに心地よい胸の高鳴りと、
じんわりとこみ上げてくるような温かさを与えてくれた。
「勿論ユキのこと信じてたけど、
昨日この紙を見たときは
心臓が止まりそうだった。
ご両親に挨拶もして、
もう何の問題もないって思っていた矢先に
この紙見つけちゃったから……」
私は自分が感じたことを包み隠さず全部ユキに打ち明けた。
そんな私にユキはゆっくりと自分の気持ちを話してくれた。
一度は役所に行って出そうとしたが、
後ろめたさから出せなかった事。
私を家の事に巻き込むことに抵抗を覚え
気持ちが近づいても出せなかった事。
そして話そうと思ったがタイミングを逃してしまった事。
?
最初のコメントを投稿しよう!