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「よし! 間に合った!」
思ったよりも早く着くことができ、
マンションのドアにタッチしながら思わず歓喜の声を上げる。
もう急ぐことも焦ることもないと一安心し、
額に滲み出る汗をハンカチで拭い仰ぎながら
エレベーターで部屋へと向かう。
でも部屋のドアを見た途端に気持ちが引き締まり
妙な緊張感に囚われる。
「落ち着け私、
何を緊張してるんだ」
自分に言い聞かせ落ち着かせると鍵を開けドアを開けた。
瞬間、
私の目に信じられないものが飛び込んできた。
――それはユキの靴。
こんな時間に帰ってきたことなんてないのに、
すでに靴はそこにある。
確かに部屋の奥のドアから電気の明かりが洩れ、
微かな人の気配がしている。
別に何時とも約束していたわけじゃないが、
急に自分が遅刻してしまった気持ちに陥り焦りだす。
私は慌てて靴を脱ぎユキの居るリビングへと向かう。
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