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俺は今までこんなに緊張したことがないだろう
ってくらいの緊張感を覚えながら
意を決して口を開いた。
「咲穂、
次の休みに二人でこの婚姻届を出しに行こうな」
俺の腕の中で咲穂がピクリと反応を見せる。
密かにポケットに潜ませておいた指輪を気にしながら
咲穂の反応を待つ。
頷いてくれるんだと、
いつもみたいに「行く」って元気に答えてくれるんだと思っていたのに、
咲穂から返ってきた反応は想像とは反し
咲穂は俺の腕の中で小さく頭を横に振った。
「嫌……
出したくない」
そして想像もしていなかった言葉を口にする。
俺は自分の耳を疑い、
そして抱きしめていた咲穂を思いっきり引き離し、
その表情を伺い見る。
でも“嫌”と言った割りには嫌そうな顔はしていない。
それどころか少し照れくさそうに頬を緩めている。
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