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とてもじゃないが、
あれが咲穂の口から出てきた言葉とは思えず、
やっぱり聞き間違えじゃないかと思ってしまった。
「咲穂?
今、
嫌って言ったか?」
半信半疑で恐る恐る聞いてみる。
咲穂は一瞬、
複雑そうな顔をして躊躇(とまど)いながらゆっくりと頷いた。
咲穂の事が分からなかった。
どう見ても今の流れ的には
笑顔で「うん」って答える咲穂の光景しか浮かばなかった。
それなのに、
まさか「嫌」って言われるなんて思わず、
かなり動揺してしまった。
理由が知りたい……、
でも聞くのが怖い。
掛ける言葉を迷う俺に
咲穂は躊躇(ためら)いながらゆっくりと口を開いた。
「その婚姻届は出したくない。
出すなら新しいのを二人で貰ってこよう」
恥ずかしそうに少し顔を赤らめながら
上目づかいで俺の様子を伺うように見てきた。
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