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「ちょっと待って」
藤子さんは呉服屋さんに耳打ちした。何だろう?何か僕の手違いがあったのかな?
「はい、かしこまりました。こちらでさせていただきます」
「駿河屋の藤堂さんに、雪兎も御挨拶なさい」
「ハイ、宜しくお願いします。あの・・・」
「はい、何でございましょう?」
「もし、僕の選んだものがおかしかったら、藤堂さんのセンスで換えてもいいので」
「いえ、完璧な選択でしたよ。雪兎さまの選ばれたものでお仕立て致します」
「ありがとうございます」
呉服店の藤堂さんは車で帰って行った。
「あんたなかなかやるわね」
「直観だけなんだけど・・・ごめんなさい」
「着物が来たら着付けをするから、その前までにこの着付けビデオ見ておきなさい」
「はい、ありがとうございます」
「あ・・・姐さん、僕、女の子としていた方がいいんでしょうか」
「あんた女装が趣味なの?」
「いえ、違います」
「そのままの雪兎が虎太郎は好きなんじゃないの?虎太郎が望んだらしてあげればいいじゃない?」
「あ・・・はい。そうします」
こたクンはそのままの僕でいいのかな?
「あ、そうだ!僕、料理出来ないんですけど」
「料理は料理番がいるからしなくていいわ。実は私もまるっきりダメなのよ」
「そうですか・・・よかった」
「学校の宿題は?今日はこれで終わるから・・・勉強しなさい」
「はい、ありがとうございます」
部屋に戻って深い溜息をつく。虎太郎の枕を抱き締める。
「やっと一日目が終わったよ、こたクン。今なにしているのかな?刺青痛いよね・・・心配」
ギュッと抱きしめて臭いをかぐ。こたクンの匂い・・・すぐ会いたくなっちゃう。藤子さんもビシビシと言う割に優しかったな。明日は何を習うんだろ。
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